冬になると郷土料理が美味しい
ジュリアンは大晦日、我が家から北に200 Km、アミアンにある友達の両親の城に何人かの親しい友達と集まる。友達のお父さんは、じゃがいも生産者。今から30数年前、生産者仲間3人で、親指大の小さな煮崩れしないジャガイモを生産し始める。
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ネズミに似た形なので小さなネズミ、この地方で一番知られている海岸避暑地の名前を使いラット・ドゥ・トゥッケで商品登録。これは元々リオン、アーッデッシュ原産で、1970年頃に北に持ち込まれた品種。栗の味がするラット・ドゥ・トゥッケは当たり、高級レストランシェフが使い始める。特にこれを使ったロービューションのピューレは世界的に知られる。今では生産者数は7軒になり、値段は高いものの一般に手に入るようになる。このじゃがいもを大量にもらってくる。薄い皮を剥かず、丸ごと食べるのが一番おいしい。
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2度目の外出禁止令が1ヶ月半続いた後、現在も夜8時以降外出禁止。私達はジュリアンが2ヶ月近く居たし、その後も2人なので孤独感はない。一人住まいの人達は、暗い太陽の少ない天気も重なって厳しい時期。親しい一人住まいの女友達2人を呼んで、ラクレットを食べるのを思いつく。ラクレットは、スキー場のある地方、サヴォア、アルプスの郷土料理。ラクレットと呼ばれる牛乳で作ったチーズを溶かし、シャキュトリーとじゃがいもと一緒に食べる。ほとんどの家にこのチーズを溶かす器具があり、寒くなると食卓に登る。準備が簡単なので、冬、若者が集まると食事はラクレットにすることが多い。
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お肉から作られる加工食品の総称。
生ハム、ソーセージ、サラミ、テリーヌやパテなど。
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この日のシャキュトリーは、生ハム、ローゼット、ショリゾー、ブレサオラ、鴨干し肉。お昼に新年を祝ってシャンパンで乾杯。2時ごろから食事をはじめ、暗くなり始めるまで、おしゃべりをしながらゆっくり食べ、暗い冬の午後を忘れる。ワインはアルザスのピノ・グリ。サヴォワの白ワインに負けないぐらいラクレットに合う。素朴な料理が備前の皿で映える。
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この週末は子供達が帰ってくる。元肉屋の友達が、故郷の田舎で恒例の豚屠殺。きれいに切り分けた半頭分もらったばかりなので、ソーセージをレンズ豆とラット・ドゥ・トゥッケをポワレしたのと食べる。冬になると郷土料理が美味しいし、それに必要なじゃがいもが大活躍する。