フランス人は世界で最も恵まれた国に住んでいる不平不満者か・・・
ニュースはラジオで聞き、明るいニュース以外テレビの映像を見ない私は、先日パリに出かけてショックを受ける。ゴミ収集人のストライキで、パリはゴミだらけ。看板などが過激なデモで壊されている。
マクロン大統領公約の年金改革。歴代の大統領が改正案を出す度に、国民の反対に遭い撤回。年金赤字増大で、後には退けない状態。3年前長期ストライキが始まって一か月後、政府は年金支給を64才に延ばす案を見直すことにする。しかし完全撤回を要求して続行する年金制度改正案に反対し、鉄道、メトロが史上最長のストライキを続行。
昨年マクロンが大統領に再選。再度改正案を手掛ける。今年1月からそれに反対するデモ、ストライキ。交通、ゴミ収集が麻痺、ガソリン不足、学校、美術館などの公機関を閉鎖。ルーブル美術館休館。エッフェル塔閉鎖。花の都パリに憧れて来る観光客は、フランスの現実にがっかりする。デモがエスカレートし、放火、破 壊。機動隊出動に、修理費と国には膨大な出費が増える。国が豊かにならなければ国民も潤わない、単純な方程式が分からない人達だ。デモは大学生、高校生にまで及ぶ。仕事を始めていない若者が、年金生活を考える国がどこにあるだろう。政府は年金支給年齢こそ譲歩しないが、かなり民衆の抗議を聞く。20才以下で仕事を始めた人は43年働けば年金が支給される。育児で仕事から遠ざかっていた女性に、その間を加算することにする。
ヨーロッパ一の長寿国、フランスの年金就業年齢はヨーロッパで 最も早く62才。これを徐々に64才にし、職業別制度を統一して一律にする。これまで優遇されてきた国鉄職員や公務員への措置を見直そうというのが政府案。国鉄運転手は、石炭を炊いていた当時勝ち取った権利で、現在も50代前半で年金生活に入っている。社会主義政権のミッテラン大統領が、14年間組合の機嫌を取り、彼等が要求する権利を与えてきた弊害だ。
フランス人の70%はデモストライキを支持。一旦勝ちとった権利が脅かされるとなると、フランス革命に戻る。ルイ16世をギロチンにかけた民衆は、同じコンコルド広場で、マクロン大統領、ボーヌ首相の人形を燃やす。自然に恵まれ、豊かな国土。教育は大学まで無料だし、大病をすれば国が面倒を見てくれる。他の国にはない最低賃金も保証されている。失業者には、手当てを出し、医療、近郊の交通費、 美術館など国の施設は無料。フランス通のドイツ人哲学者が、フランス人は世界で最も恵まれた国に住んでいる不平不満者だというが、正にその通り。
デモ、ストライキ大国に、私達の周りの常識ある人達は耐えられなくなってきている。