安藤忠雄が手掛けたボース・ド・コマース
現代アート美術館ボース・ド・コマースが昨年オープンする。18世紀、穀物取引所として建てられ、1889年の万博にはガラスのドームが加えられる。19世紀末から証券取引所だった建物をファッション業界の巨匠、ピノー財団がパリ市から借り受け、安藤忠雄が改装を手掛ける。
18世紀の円形建物の中 にコンクリートの空間を作る。「過去、現在、未来の時間の糸をつなぎ、芸術とも対話する空間を作りたいと考えました」と安藤。過去と現代が共存する壮大なアート殿堂が完成する。ピノーは20年前にコンペを勝ち取った安藤と、セーヌ川の中洲に美術館を作る計画が難航し、挫折。その後、ピノー安藤組はヴェネチアで、2つの美術館を作り上げる。パリの美術館がやっと実現する訳だが、立地条件は、こちらがはるかにいい。パリのど真ん中、ショッピングモール、フォーラム、レアールの公園が横にあり、館内から眺める自然とマッチした景色は抜群。
私が親しくしているガイドは、安藤忠雄の大ファンで、彼の建造物を見に直島にも行っている。直島の話をしているうちに、この美術館がオープンしたら行こうと約束。私は町の愛好会の人達を連れ、彼女のガイドでオープニング展を見る。1000を超えるピノーコレクションから200点を選び展示。現代アートは、私達には理解しがたい作品が多いが、ガイドの説明があると作品に興味が持てる。コンクリートシリンダーの外側に沿って作られた階段と通路は3フロアに渡る10の展示室に繋がっている。3階の階段を登ると、シリンダーを上から覗き込む事が出来る。 この美術館4階には、ミッシェル・ブラスの店が入っている。
穀物市場だった建物に敬意を評し、レストランを穀物市場と名付け、穀物や豆類を中心としたメニューを出している。行きたかったが、愛好会では安くて気軽に入れる店を選ぶので予算的に無理。すぐ近くにある評判の良いナポリピザを出す店で昼食。参加者が2つのテーブルに分かれ賑やかに昼食。見学の後、皆で食事をするのも毎回楽しみだ。
もう一つ新しい美術館は、ピノーと比較されるアルノーのルイヴィトン財団美術館。フランク・ゲーリーの設計で、2015年にオープン。ブーローニュの森にある。鉄骨とガラスの建築が自然とマッチしたゲーリーらしいモダンな建物は素晴らしい。11の催し会場、展示場があるが、展覧会場の地下は天井が低く各部屋も狭く、前者の美術館の開放感がない。二つの美術館を比較した時、私は安藤が手掛けたボース・ド・コマースに軍配を上げたい。