From LONDON

ロンドン・3度目のロックダウン/最高の「Tier4」(自宅待機)

コロナ禍だからこそ、新しい価値観と出会い、学びがあり、貴重な感情があった

イギリスでは秋ごろからコロナウィルスの話題になると、「クリスマスまでには落ち着かせたい」「クリスマスを楽しく過ごすために規制を今厳しくすべき」と言われていて、いつもどおりにクリスマスを過ごすことがひとつの目標のようになっていた。しかし、その願いも虚しく英国は12月19日、方針を急転換し、大規模なロックダウン(都市封鎖)を発令した。それもそのはず、現在イギリスではロンドンを含む英南部で感染力の高い変異種が広がっており、感染者数が急増している。ジョンソン首相は、変異種について「最大で70%以上、従来の種より伝染性があるかもしれない」と述べた。そのため、イギリス政府は今までTier3までしかなかった警戒レベルに加え、最高の「Tier4」(自宅待機)を新設した。首都ロンドンを含むイングランド南東部の大部分が対象で、クリスマスシーズンに世帯の枠を超えて集まることも禁じられた。現在、生活必需品を扱っていないお店や飲食業はすべて閉店している。美容院、図書館、ジムなども休業中で、不要不急の外出が認められていない。

ロンドンは今回で3度目のロックダウンになるが、実は2度目のロックダウンは最近行ったばかり。クリスマス時期での本格緩和を見込んで、11月5日〜12月2日までの4週間封鎖されていたのだ。

11月中旬、ロックダウン中のロンドンの様子

どこに行っても人気がなく閑散としていたため、紅葉の美しさが際立っていた。皆ルールを守って外出を控えている様子が目に見えて分かって、安心していた。

ロックダウン中は友人と会い、テイクアウトをしてベンチでゆっくり会話を楽しんだ。気の知れた友人と対面で会って話せることが、どれだけ幸せなことなのか再確認した。

厳しいロックダウンの甲斐もあり、12月2日、解除されたロンドンの警戒レベルは「Tier2」。屋内で他世帯との集会は禁じられたが、屋外では6人以内で集会でき、パブやレストラン、美容院も営業していた。

12月上旬、ロックダウンが解除されたロンドンの様子

クリスマスの買い物で通りには多くの人が溢れていた。

写真を見て分かる通り、ロンドンでは2・3割の人がマスクをしていない。春までは7割くらいの人がマスクをしていなかったため、これでも習慣化されてきた方だ。日本人からすると信じられない光景に違いない。公共交通機関ではマスクをしなければ罰金が取られるルールになっているものの、降りた瞬間にパッと外す人たちがいる。そもそもマスクを着用する文化もないし、根本的に嫌いだ。個人の自由だという感覚があるようだが、このままではいつまでたっても感染者は減らない。

室内で友人と会うことができないため、寒さに震えながらテラス席で食事をしたり立ち飲みをする人々。これもコロナ禍ならではの光景だ。

この期間は、もちろん万全の感染対策をしつつ、友達と展示やイルミネーションを見に行ったり、レストランにも行った。久しぶりに見るユニークなアートも、何気ないお店の人とのやりとりも、レストランで食べる大きなピザも、友達と飲むお酒も、全てが新鮮に感じて幸せな時間だった。

ロンドン警戒レベル「Tier2」

電車の中には買い物袋を持った人や、クリスマス仕様の洋服を着ている人がたくさんいた。
この日は「クリスマス・ジャンパー・デー」。イギリスでは、毎年12月の特定の金曜日に「クリスマス・ジャンパーを着て募金をしよう!」と呼びかけるキャンペーンをやっている。支援を必要とする子どもたちのために皆が最低1ポンドを寄付するというものだ。

こんな個性的なクリスマス・ジャンパーも発見!イギリス人は、「ダサかわいい」を楽しんでいるらしい。

この時期は特に、クリスマスの可愛いツリーやグッズ、カードがたくさん販売されていた。

ロンドン警戒レベル「Tier2」。この時イギリス政府は、クリスマス期間は特別に規制を緩めることを発表していて、12月23日から27日までの5日間、どのレベルの地域でも、人数の制限なく3世帯まで個人の家の中で集まることが許可されていた。なんとお泊りもありというルールだった。この緩和を利用して実家に帰るのを心待ちにしていた人は多い。

しかし、12月19日ジョンソン氏は国民向けのテレビ会見で、「非常に残念だが、クリスマスを予定通りに行うことはできない」と述べ、この行動制限の緩和も取りやめとなってしまった。英国の人たちにとってクリスマス家族に会わずに過ごすことは、日本人が正月を一人で過ごすくらいわびしいことのようだ。ジョンソン氏は、これがどれだけがっかりする知らせか承知しているとした上で、「ほかに選択肢はないと思う」と述べていた。

そして異例のクリスマスがやってきた。

クリスマスイブ当日。クリスマス仕様の格好をした人を多く見かけた。こんな状況下でも、クリスマス気分を盛り上げる愉快なロンドンの人たち!

パン屋さんやカフェではクリスマス限定の可愛いケーキが販売されていた。

クリスマス仕様のウィンドウアートも楽しんだ。

都心から離れた公園へお散歩

この日、私は友人と公園へお散歩に出かけた。私たちの街は都心から離れているため、徒歩で自然豊かな広い公園に行くことができる。

「メリークリスマス!」と言って可愛いクリスマスジャンパーを見せてくれる姿にほっこり。

ロンドン中心の華やかな雰囲気とは異なり、ローカル感があって可愛い駅の装飾。

公園内にあるカフェが空いていたため、ホットチョコレートを買って温まった。

ロンドン中心部とは打って変わって、自然いっぱいで大変のどか。緑や動物がいっぱいの癒される空間だ。ホットチョコレートを片手に、動物の独特な動きに笑ったり、お互いの近況や今後のことなど語り合ったり、共通の友人にビデオ通話をして楽しい時間を過ごした。

フラットメイトクリスマスパーティー!

家では、イギリス人のフラットメイトクリスマスパーティー!料理や食事・お酒、プレゼント交換を楽しんだ。

フラットメイトや友人からもらった素敵なプレゼント!手作りの飾りやクリスマスカードは心が温まった。

そしてクリスマス当日。イギリスのクリスマスは、1年で1番のビッグイベントだ。クリスマスのイギリスは、会社はもちろん、スーパーを始めお店も全てお休み、さらには公共交通機関も全てストップしている。当日は家族とお家で過ごすのが主流だ。

現在他国に住むフラットメイトの旦那さんは、帰国を予定していたがコロナの影響でキャンセルになってしまった。そのため、パソコンをテーブルに置いて、ズーム通話で一緒にランチを楽しんだ。今年ならではの貴重な光景だった。

エリザベス女王のクリスマスメッセージ、そして今年1年の感謝

この日の夜、イギリスのテレビではエリザベス女王がクリスマスのメッセージを発表していた。どうやらこのスピーチは毎年恒例らしい。

新型コロナウイルスの影響が続いたこの1年について「人々が離れて過ごすことを余儀なくされたが、色々な形で、人々の絆を強めることにもなった」「助けが必要な人たちのために地域で働くボランティアの方たちの物語に、私と家族は感銘を受けた」と述べていた。

また、医療現場の最前線で働く人たちに対して感謝の意を示した上で、大切な人を失ったり、家族や友人と会えずに寂しさを感じている人々に寄り添い、思いを届けていた。

「あなたたちが本当にクリスマスに欲しいのは、ハグをしたり手をぎゅっと握ったりすることでしょう」「あなたは一人ではありません」「私はあなたたちのことを思い祈っています」といった女王の温かい言葉に胸を打たれ、私自身も救われた。

このスピーチで驚いたのが「パンデミック」「コロナウイルス」「COVID-19」の言葉を一言も発さなかったことだ。女王なりの、人々への気遣いや寄り添う気持ちが感じられた。

こうしてクリスマスが過ぎて、今年を振り返ると本当に色々なことがあったなと感じる。渡英したばかりの3月は、アジア人というだけで「コロナ!」と叫ばれ馬鹿にされたり、中指を立てられたりと目に見える差別を受けた。ロックダウンは3度も経験して、正直思い描いたイギリス生活は送れていない。そんな中、ありがたいことに人との出会いや環境には恵まれていて、今まで触れたことのない新しい価値観に何度も出会うことができた。そんな出会いや学び、そして感情もコロナ禍だからこそ、より一層貴重なものとなっている。

収束する兆しが見えないコロナ波だが、どんな状況であれしっかり前を向いて今後も渡英生活を充実させたい。